志士の町(1/24)
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「ここはどこだ」
もしオレが小説を書くとしたらこの文から始める。
だって未だかつて、この文から始まる小説があったのか気になるからだ。
なんでここにいるのか覚えていない。まずここがどこなのかすらわからない。服は制服だし、肩にはいつも学校に持っていっているカバンがかかっているから、おそらく登校中か下校中だったのだろう。
だろうというのは、今に至るまでの前後の記憶が飛んでいるからだ。健忘症状というらしいが、詳しいことは知らん。
「古びた町だな。今何時だ?」
日時を確認するためにポケットに入れたスマートフォンを取り出した。ボタンを押して、トップ画面を起動させた。
「‥‥‥あれ?」
時間が表示されていなかった。
それだけじゃない。電波も今が何年何月何日なのかもわからなかった。
念のため、腕時計で確認をしてみた。時間は6時24分。朝なのか夜なのかわからないが、東西南北を確認したところ、あれは夕日と見たから、おそらく今は夕方なのだろう。
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