しずかなよる



 


 夜中の2時を回っていた。今日の仕事は普段よりも忙しく一日中バタバタとして、疲れているはずなのになかなか寝付けない。明日が仕事なら今、無理矢理にでも眠るのだが、明日から二日間久しぶりに仕事が休み。久しぶりに夜更かしでも、とベッドから起き上がりキッチンへ向かい冷蔵庫からチューハイの缶をひとつ。
そしてまた、寝室に戻りベランダの窓を開け、ベランダに足を放り出して座る。窓を開けると生暖かい風が頬を撫でる。さっきまで、クーラーをつけていた部屋も窓を開けたせいで、冷気が全て逃げていってしまった。
 外は夜中だからか、静かだった。月が辺りを照らしていて、少し明るい。耳をすませば、アパートの少し離れたところに田んぼがあるからか、微かに蛙の鳴き声が聞こえてきた。夜の静かな空間で一人お酒を煽る。月を見上げると、今世界に私一人しか居ないんじゃないか、なんて不思議な気持ちになった。
 フフ、へんなの。と一人で笑ってみれば、今度は少し寂しい気持ちになる。ほんと不思議ね、なんて自分で思うほど今日は気持ちの変化が激しい。どれもこれも全て、この夜のせいね、なんて呟けば、ふと彼に会いたくなった。私より8つも年上の彼は、私みたいな新人社会人なんかよりも遥かに仕事も忙しいだろうから、きっと今もパソコンと向き合ってるでしょう。それか、明日に備えて眠ってるかしら。きっと、明日も明後日も仕事でしょうね。
 またお酒を口に含む。
 たまに私が会いたいと思う気持ちの、その半分も彼は思っちゃいないだろう、と思うときがある。きっと彼は私がたまに、こうやって一人貴方を思い恋い焦がれてるなんて、知りもしないでしょう。最近、二週間に一回しか連絡して来ないことが寂しいことだって気付いてなさそうね。思いが募るのは私だけかしら。

「あら、蚊に刺されたわ」

ぼんやりとしていると、かゆみを感じふくらはぎに触れれば、刺されたあとがぷくりと腫れている。ポリポリと刺された場所を掻いていると、酔いが回ってきたらしくだんだん眠たくなってきた。

「そろそろ、寝ましょうか」

私はチューハイを飲み干し立ち上がり、そっとベランダの窓を閉めた。


 彼にそっと抱き締めて欲しいと思うのも、少し唇が寂しく感じるのも、珍しくこうやって恋い焦がれるのも。どれもこれも。全てこの静かな夜のせい。


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