毒入りスープ
[書物庫](1/4)
さっきのような化け物は居ない。


部屋の中央には小さな四足の古い机があり、その上にあるキャンドル皿に乗せられたろうそくがうっすらと中を照らしている。


四隅には本が一杯に詰められた本棚が置いてあった。



「よかった、見た感じ全部日本語で書いてあるみたい。これなら読めるね」



いとせが本棚を見渡していたところ、ある黒い本が目についた。



「『スープの夢について』?」


「どうしました?」


「あの、上の方にヒントになりそうな本が置いてあるんです。みつおさんとってもらえませんか?」



「いいですよ」



「ありがとうございます」




いとせより背の高いみつおが手を伸ばし、本を取る。



その横で「あそこ届かないのーぷーくすくす」と笑うアンモニアに「アンモニアだって同じ身長でしょう!?」といとせが言い返している。



「あの、これめっちゃベトベトするんですけど……」


「え?」


みつおから渡された本をいとせが触ると確かに本はべったりと湿っていて、ほんの微かに甘い香りのする黒い液体が手についた。



「うわあ近づけないで」



アンモニアが自身の芸名のことを棚に上げて本を持ついとせから遠ざかる。



人としては当然の反応かもしれないと思い色々言いたくなるが、我慢していとせは本を読み進める。


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