ノーカット完全版
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〜 プロローグ 〜


(背中のキズの痛みで、横になれないため)僕は椅子に座って、部屋の白い壁を見ていると、

何かもう、限界のようなものを感じ『───このまま、ここにいたら俺は殺される…』と、突然に思った。


………というか、本能的に怖く感じて、僕はマンションの部屋を出ることした。


『───もう、ここを出るしかない…。じゃないと、死ぬ』




顔は血が滲み、目も鼻も判らないような異様な状態なので、帽子を できるだけ目深にかぶり、

ちょっとでも動かすと、激痛の走る キズだらけの体を押し、なかば這うようにして、路面電車の停留所へ歩いた。


向かう、道すがら… ほとんど血の付いた、かさぶたで覆われいるような、爬虫類みたいな顔なので、

すれ違う人のなかには、そんな僕を見て「わぁっ!!」と声を出し、必要以上に大袈裟、驚く二人組の女子高生や、

一瞬、後退りし「───あっ… あっ…」と、何か怯えるような年配の女性がいた。





『………このままだと、俺は119通報される』





それらを避けるため、人のいない裏通りに変えたけど、今度は頭上に、なぜかカラスが集まってき、さかんに飛び回った。


彼らには、僕がクルマに曳かれ、死んだ猫のように見えるのだろうか?

そう言えば、たしかに その時の僕は、ほとんど死んでいた。


───カラスに襲われても、手が上がらないから抵抗できない。


 現代社会にも弱肉強食がある。






僕は、それら通行人らの視線と、それからのカラスらを気にしながらも、なんとか電停の停留所まで歩き、

路面電車に乗って座ったけど、そこから駅までの、たった10分足らずが異常に しんどく、とてつもなく辛かった。


 ただただ、じっと堪えた

 もう、堪えるしかなかった



「───ワシはまだ、ここで死ぬわけにはいけん。まだ、生きたいんじゃ…」思わず素になり、なぜか大嫌いな呉弁で思う。


それを使ったのは、何十年ぶり… 子供の頃以来である。






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第一章



僕は今、旅をしている…
部屋を借りているけど、帰れません。

旅が、どんなに快適や安定と程遠いもので、辛く感じても、ある理由があって帰れません。


バカみたいな話しだけど、旅をしていて、部屋に
まったく住まなくても、

これも、ある理由があって 解約できないので、毎月 78000円を振り込なくてはなりません。




帰れない そこの割高な家賃を、今も払い続けているけど、実際に住んだのは、ほんの幾日もありません。


そして、これからも旅をして住まない、また解約できない部屋の、高い家賃を払い… 払い続けるつもりです。


『なぜ、僕が旅をしているのか?』

『なぜ、部屋を借りてるのに帰れないのか?』

『なぜ、住めない… 住まないのに部屋を解約できず、家賃を振り込み続けているのか?』



───その理由は、あの日に遡る…







〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜







僕は それまで、うつ病で療養させてもらっていた祖母の家を、何も言わず、

ジーンズの後ろ、両方のポケットに替えのパンツを、一枚づつ突っ込み、手ぶらで出た。



その時… 全財産が三万円しかなく、まず カネを消費者金融から借りるため、広島へ向かった。


うつ病で荷物を、まとめる気力が無いのと、免許証の記載住所が、その街のためである。





しかし 僕は、以前… クレジットとサラ金、合わせて300万近い借金を作り、その月々の支払いを延滞し、最後は返せなくなって、

最終的には、弁護士を介入… 債務整理したため(いわゆる世に言う)ブラックリストとなっていた。



なので(そうして広島に行っても)消費者金融からカネを借りられるかどうか判らなかったが、

『───ブラックリストは5年で消える…』そう、おぼろげに知っていたので、

いちかばちか そいつに賭けて、その時の苦しい うつ状態から、なんとか抜け出したかった…


一日中、横になって何もできない、死んだような生活はもう限界。

………本当に、辛く苦しい。







あの日… いつものように「……死にたい」思いながら、天井の木目を見てると、

「───そう言えば、あれから5年 経ってる」と、突然 閃(ひらめ)いた。


ブラックリストは、五年で消えるはず。




───だが、もし消えていなかったら、俺は……






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松山観光港から、フェリーに乗り三時間… 宇品港へ到着。



そこから路面電車に乗り、広島駅に夕方5時頃着いて、

ちょうど駅前で配っていた、
某大手消費者金融のティッシュを受け取り、そのまま流れるよう、そこの店に入った。


───たしか、ディックとか言ったか



いかにも偶然「───ティッシュを もらったから、ちょっと入ってみようかな…」と言いたげ、とぼけた顔で。







ずいぶん久しぶり… サラ金の、申し込みだった。


仕方ないことだけど、洗いざらいプライバシーを記入させられ…

それを元に根ほり葉ほり、いろいろ無遠慮に聞かれ… さらには、多少 疑惑… 疑いの目でも見られ。


それら《られ×られ×られ》三っつの苦戦を、目の前のカウンター 見るからに胡散臭い男や、

その奥の、何を考えてるのか分からないような、いやらしい支店長みたいな男と経て、

その結果… なんとか、十万円を借りる事ができた。いわゆるゲットする





 正直、意外だった。


まさか、いきなり最初から、カネを借りれるとは思ってなかった。


振り返り考えると、運が本当によかったと思う…






僕は、そいつを手にし『───10万では、そう長くはもたないが、何日かはやっていける…』そう思い、

それまでの、死ぬほど不安な気持ちが、とりあえず無くなりホッとして、

そのカネの中から 5000円を使い、駅前のビジネスホテルに宿をとった。



目の前に、いくつかある ホテルの中から、ちょっと古びた そこを選んで、

そのまま入り、フロントで「すいません、───今日 泊まれますか?」と直接、空き部屋を確認する。


飛び込みは、新規の「予約なし」である。






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部屋に入ると、それまで全く無かった、精神的な余裕も生まれ、黙って出てきた 祖母のことが気になり始め、

道を挟んだ、前のローソンへ行き、プリペイドカードを買い電話した。



その時、僕のケータイはプリペイド式で、それまではカードが買えず、

何ヶ月も期限が切れていたため、通話ができない状態だった。


※(ケータイも料金滞納ブラック、普通に契約不可)





思えば「───おばあちゃん… お願いじゃけん、助けてぇや」12年ぶり、突然の訪問に始まり、

それからも、散々 世話になったにもかかわらず、無断で うちを飛び出したわけだから、

「アンタは恩を仇で返して…… 二度と帰ってこんでええ!!」負けん気の
強い、祖母は激怒していて、すぐ切られた。




───もう絶対に、帰れん…







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次の日…

とりあえず前日の、10万円ゲッツで『───ブラックリストからは消えている…』そう確信した僕は、

朝一から精力的に駅周辺の、大手から準大手の消費者金融を、かたっぱしから回って申し込んだ。


それまで、何ヶ月も鬱病で死んだように、一日中 寝ていた自分とは信じられない、別人のように精力的に動けた。

体中の細胞が全て、入れ変わったかのような、とてつもなく不思議な感覚だった。


心の病は、その時いる場所に原因があり、それを変えると、劇的に改善する場合が多々あるらしい…


───その時は完全に、それだった気がする。







しかし、その確信とは裏腹… 申し込んだ全てのところで、ことごとく融資を断られ、カネを借りることはできなかった。


僕は(その完敗状態に)すっかり落ち込み、ため息を繰り返し、また 時間も夕方になり疲労困憊グッタリして、

精神的にも、体力的にも限界を感じ、再び前日に泊まった、ビジネスホテルへ戻った。



前日同様、いきなりフロントに行き「………今日も、泊まりたいんですけど?」と、空き部屋を確認する。


電話は苦手。対面主義。





部屋に入り、しばらくベッドに横になっていると、少し回復… 元気も出てき、

『───サラ金屋の閉店までは、あと一時間ほどあるな…』と考え、起き上がり、

ダメ元の、なかばヤケクソのような気持ちで、もう一軒だけ行ってみる事にした…


『……よしっ、行くだけ行こう!』と。





そこは以前(300万の借金をしたとき)無人契約機で申し込んだけど、審査が通らず 融資お断り…

お引き取りを有難く頂戴した、ちょっとクセと、若干 問題のあることで有名な、某大手消費者金融で、

僕の中で、無意識『───武富士は、審査が厳しい…』という、イメージがついてしまっていて、

昼間もなぜか、その店だけは 初めから回らなかった。



行き帰りの道… 横目で、チラッと見るだけ。






しかし そのサラ金屋に、ダメ元で行ってみるとは言っても、もう昼間のような元気はなく、

それに、以前もダメだったので『───今回も、まず無理だろう…』と思い、

初めから諦めている感満載の、僕的には ある意味、冷やかしに近い気持ちだった。




店内に入ってからも、柄悪ヤカラ丸出し、足を組んで前に投げ出し、

イスの、背もたれにダラリと寄りかかり、申し込み用紙にも、ミミズが這ったような殴り書きで、

とうてい これから、カネを借りようとする態度とは、程遠いものだった。






───面倒くせぇなぁ


 ぶち、たいぎいのぉ…







だが そのような、ふざけた僕の態度にもかかわらず、

昼間… 他の、消費者金融を回ったときみたいに、すぐに断られた感じとは全然 違っていて、

武富士は やたら、しつこいくらい いろいろ聞いてきた。


※(サラ金屋は、最初に「貸せない」と判断した客には、一切 何も聞かない)






僕は その質問に、ひとつひとつ答え… 若干、鬱陶しさも感じながらも、

同時に『───これ、もしかして借りられるかも…』そんな淡い期待の気持ちが、ジワリジワリと湧いてきて、

その感が高まるにつれ、組んでいた足をきちんと戻し、背もたれに深く寄りかかっていた、上半身も起こし、

ポケットに突っ込んでいた両手も、膝の上に きちんと置き直した。





  これ、もしかすると?






  もしかするのか?






  どうよ?





  頼む!



  もしかしてくれ!武富士様







その時(店内の有線だろうか…)なぜか、B'zの「ZERO」が流れていた。

いつもの統合失調、幻聴かもしれないけれど。


───いや… 考えてみたら、サラ金屋にロックのBGMなど、あり得ないから絶対 幻聴に違いない。



やはり、一度 患った精神分裂病は、完全には治らないのだろう。


正直に白状すると私は、隔離入院歴が7年… 筋金入りの本気(マジ)なのである。


以前… キレて、起こした殺人事件も、執行猶予で釈放されている。










───しかし思えば、俺は なんで、あんなバカな事をしてしまったんだろうか…



 本当に『後悔、先に立たず』



 今でも悔やみきれない






そして現在も、まるで自分の中に(自分じゃない… 自分には抑えられない)狂犬がいるみたいで、恐ろしくてたまらない。





───私は一体、何者なんだ…







誰か教えてください

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