遅すぎた真実のエピローグ
15 [エピローグ](1/80)
「一体何処まで行くつもり? どうせ何処に逃げても捕まるわよ。」

「相変わらず、口の減らない女だな。 少しは黙って運転出来ないのか? ‥‥正面に山が見えるだろ? そこへ向かえ。」 

清子が運転席でハンドルを握り、百合と木之下さゆりと、謎の男を乗せた車は、ある海岸沿いを走っていた。 

月の明かりが、やけに目立つ夜だった。 その月の明かり以外の光といえば、街路を明るくするために取り付けられた街路灯の明かりだけであった。 もう夜だという事もあるのだが、人通りなどはまるで無い。 

その四人が乗っている車の進行方向の正面には、大きな山が聳(そび)えており、まるでこの道を通る全ての者の行く手を阻(はば)むかのように、そこに立ち塞がっていた。 暗闇の先に見えるその山は、闇に包まれ、黒く不気味な表情をしていた。

右手には街路樹や街路灯ばかりが目に付いて、他に目立つ物は特に見当たらなかった。 その街路灯の後ろの景色が真っ暗に感じる程に、民家もほとんどそこには存在していなかった。

そして左手には、日本海が広がってっていた。 月の明かりが、その日本海の海面を綺麗に照らしており、海面から反射している光りが波に揺られ、まるでダイヤモンドのようにキラキラと輝いていた。 
もし仮に、この四人が楽しくドライブをしているのであれば、その海面に広がる神秘的な光景を堪能(たんのう)できたのかもしれない。 だが、決して楽しくドライブをしている訳ではないのだ!

清子は、フロントガラスの先に見える山へと目を向けた。

「あの山に何があるの?」

ルームミラーで男の顔をチラッと見てから、清子は男にそう聞いた。

「お前達が、それを知る必要はない。 そのまま真っ直ぐ行って、突き当たりを左折しろ!」

清子はムッとした顔をしながら、ルームミラー越しに男を睨み付けた。

「偉そうに! あなた一体、何様なの? あなたみたいな人、私の一番嫌いなタイプだわ。」

「フン。何とでも言え! どうせお前達は、もうすぐ死ぬんだからな。」

男のその言葉を聞いた途端、顔を青くして小刻みに震える者が一人いた。

「私‥‥ まだ死にたくない‥‥」

助手席から木之下さゆりが、力のない小さな声でそう言った。 清子が心配して、助手席に目を向ける。

- 146 -

前n[*][#]次n
⇒このページに、しおりを挿入する



[←戻る]