遅すぎた真実のエピローグ
5 [困惑](1/12)
林が溜め息をつきながら取調室から出て来るのを見計らうかのように、白石が小走りでやってきた。

「おーい! 林さん。 さっきの件、調べて来たぞ。 ついでに、とんでもないお土産つきだぞ。」

白石は林の前で立ち止まると、古い報告書を林の前に差し出し。

「この報告書を見てくれ」 

白石はそう言って、その報告書を林にめくって見せた。
何枚かページをめくった後、白石の指は真新しい栞の挟まれたページの所でピタリと止まった。

「あったぞ! これだ! 林さん、ここからでいいから読んでみてくれ。」

白石が、人差し指でそこに印させれている文字をトントンと叩く。
そこには、4年前の強盗事件についての詳細が記されていた。

<‥‥‥‥〇〇銀行に押し入った三人組の男のうち二名は、駆け付けた最寄りの派出所の警察官がすぐに取り押さえ、現行犯逮捕された。 主犯と思われる男は、そのまま現金2000万円を所持したまま現場から立ち去り、予め近くに停車させていた盗難車で国道15号線方面へ逃走。 既に逮捕された二名の供述により、現金を所持したまま逃走した主犯の男は、長谷部伸一(21歳)と断定され、直ちに長谷部伸一を指名手配すると共に、マスコミにも‥‥‥‥‥>  

その報告書には、当時の事件の詳細が、3枚にもわたって記されていた。

「事件から一週間後、その長谷部伸一の遺体が遺書と共に発見された‥‥‥か。 あの子の言っていた通りだ‥‥」

林は深い溜め息をつき、パタッと音を立ててその報告書を閉じた。

「驚くのはこれからだぞ、林さん。 これが、さっき言ったお土産だ。」

白石は、刃渡り12センチ以上はあるであろうと思われる、ナイフの入ったビニール袋を林の前に差し出した。

「白石さん、これは?」 

林は首を少し斜めに傾け、下から見上げるように白石を見つめた。

「今日の三つの事件で、唯一、不審な指紋が検出されたのは、このナイフ一本だけだそうだ。 この貴重な指紋の持ち主が、誰の物なのか知りたくないか?」 

「勿体振らずに、早く教えてくれ! 白石さん。」 

林はごくりと唾を飲み込み、白石の返事を待った。



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