遅すぎた真実のエピローグ
1[プロローグ](1/3)
「も〜う。 煩(うるさ)くて、全然眠れやしないわ!」

ベッドの上で、そう愚痴をこぼしたのは、この物語の主人公の川上清子である。

時は既に、深夜1時を過ぎているのだが、清子のマンションの向かいにある公園辺りから、先程から男女の言い争うような声がしており、それがまた、一向に治まる気配を見せないのだった。 

清子はその声が気になり、なかなか寝付けづにいたのである。

「もう、頭に来たわ! 直接、文句を言っ来てやる。」 

まるで蒸気機関車のように、頭のてっぺんから大量の煙りを噴射しそうな勢いで、ベッドから跳び起きた清子。 

そのままパジャマ姿のままで玄関へと走り出したかと思うと、一目散に、裸足のまま勢いよく玄関から飛び出して行った。
このマンションの、ほぼ中央に位置しているエレベーターを目指し、清子は長い廊下を無我夢中で走った。

それから、ほんの数秒後の事だった。

「イヤー。 誰か助けて〜。 お願い、やめて。 誰か〜! 誰か〜! 助けて〜。」 

その女性の声は紛れも無く、先程から男と言い争いをしていた女性の声に違いなかった。
その女性は、必死に誰かに助けを求めているようだ。

その声の様子から察するに、ただ事ではないというのは間違いないだろう。

だが、その助けを呼ぶ声は、それからほんの数秒で聞こえなくなり、すぐに辺りは静まり返った。

「痛〜い。」 

眉間にしわを寄せながら、清子はかなり痛そうな声を出した。

エレベーターの手前まで来て、清子は廊下で転んでしまい、尻餅をついていたのだ。
しばらくして清子は、ゆっくりと体制を直して起き上がった。

そしてその廊下から、悲鳴が聞こえてきた公園辺りを見下ろした。
清子の住んでいるそのマンションから、20〜30メートル程離れた所に、その公園は位置している。

公園の入口のすぐ横には古い電話ボックスがあり、外灯がいくつも設置されている公園内よりも、その電話ボックス付近は遥かに明るい場所だった。
そのため、そこに一人の女性が血まみれで倒れている事に、清子はすぐに気付く事が出来たのだった。



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