未来へ
道がつづら折りになって(1/7)

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カラフルなリボンが鍋の中で踊るのを眺めていたら「それ気に入った?」と数ヶ月ぶりに顔を合わせる千波が笑いながらきいてきた。



「気に入ったというか……可愛いなって思って」

「ねー。かわいーよねそのパスタ。この間大学の友達とイタリア行ったんだけどさぁ、その時買ったんだよ」

「イタリア……」

「今度シュロも行こうよ。雲母も誘って」



イタリアじゃなくても良いけど、と。そう付け足しながら、千波はキッチンの棚の中を漁る。



「ほい、これ」

「え」

「可愛いの気に入ったならあげる。いっぱい買ってきたし」



鍋の中で沸騰したお湯に揺られるパスタと同じものが詰められた瓶を渡してくる千波。



「いいの?」

「うん。どーぞ」



瓶を受け取り、お礼を言うと、千波は軽快に笑ってガスの火を止めた。



「最近どう?」

「……普通、かなぁ」

「普通って。結婚して半年以上たったわけじゃん。なんか変わった?」

「特には……」



千波は意外そうな顔をする。

ザルにあげたパスタを皿に移して「あたしはさ」と話し始める。



「朝起きられなくて遅刻しまくってたら、いとこの家で生活することになった」

「……え、…………じゃあここ、そのいとこさんの家?」

「うん」



そういうのは先に言っておいてほしい。確かに歯ブラシとかの生活用品は2つあったし、食器も一人暮らしにしては多いと思ったけれども。



「そんなの先に知らせたらシュロ来ないでしょ、遠慮して」

「そんなこと…………あるかもしれないけど」

「大丈夫大丈夫。いとこには今日友達呼ぶねって言ってあるから」



テーブルの上にサラダと共に並べられたパスタとスープ。ちなみに、サラダは買ってきたやつでスープはお湯を注ぐと出来上がるインスタントのやつで、パスタも、ソースは市販のものだ。

千波は割と料理ができるタイプの人間ではあるのだが、「料理に関しては、『できる』と『してる』は違うの」と前に言ってた。食べられればオーケー、とも言っていたっけ。


向かい合って、いただきますと定型文を口にして。



「あ、」

「ん? どした?」

「…………いや、大したことじゃないんだけどね」

「おう、言ってごらんなさい。千波様がきいてあげよう」



何キャラだ。




「友達?が、出来た……気がする」

「疑問形なのと気がするってのは気になるけど、よかったじゃん」



変わったこと、として思い浮かんだのは神嶺妃麗さんのことだった。

彼女と私はどんな関係なんだろう、と考えてもよく分からないが、一応友達というものに括っても良いのではないかと思う。

なんと言っても、鳴滝くんと恭丞くんを除いたら、最近いちばん話した人だ。



「どんな人?」

「……ちょっと、雲母に似てるかな」

「ふうん。会ってみたいなー。……でもあれか、雲母タイプってことは友達の友達に会うの好きじゃない人か」



前に聞いたことがあるが、友達の友達は友達、というのが千波の持論らしい。対する雲母は、友達の友達は他人でしょ、と言っていた。

どちらが正しいとかはないと思うが、友達の友達は友達理論によって、私と雲母は千波を介して友達になったのは事実ではある。

千波と雲母は出身中学が同じで、高校1年の時に私と千波が同じクラスだった。1年の4月の終わりごろに、何を思ったのか、昼食時に「友達呼んで良い?」とか言い出して雲母を連れてきたのだ。あのときは普通にびっくりした。たぶん突然連れてこられた雲母も多少困惑していたと思う。






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