未来へ
かくありし時過ぎて(1/7)

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「今日行く叔母さんの家は駅の方なんだけど、先に俺の家の場所教えとくな」



時間通りにうちまで来てくれた鳴滝くんはそう言って駅に向かう道とは反対方向へと歩き始める。

恭丞くんの家と、現在彼が暮らしている鳴滝くんの家のちょうど真ん中辺りに私の(というか樹さんの?)家がある、という感じのようだ。


鳴滝くんの家までは徒歩15分ほどだった。マンションの前で、「ここの4階の1番右端」と教えてくれる。



「恭丞はだいたい俺の家にいるから、来てもらうのは俺ん家になる感じ。時々は叔母さんの家の時もあると思うけど」



教えてもらっておいて申しわけないが、片道ではあまりおぼえられていない。こっそりマンションの名前をスマホにメモして、Googleマップを頼りに来ようと決めた。



「時間とか教科とか報酬とかは叔母さんと話し合ってもらう感じになるんだけどな」



来た道をもどりながら鳴滝くんが話す。



「叔母さんは悪い人じゃねえんだけど、良くも悪くも厳しすぎるみたいなところがあって」

「厳しすぎる?」



自分は割と放任されて育ってきたからそう見えるだけかもしれないけれど、と前置きしながらも「恭丞は一人っ子なんだけど」と話を続ける。



「何年も不妊治療かなんかやって、叔母さんが45歳くらいのときに生まれた子どもなんだよ。そんで、なんか自分が生きてるうちになんでも出来るようにって、そういう気持ちが強すぎたみたいで」

「不妊治療……」

「いや、俺も母親と叔母さんが話してんのちょっと聞いただけだから、そんな詳しいこと知ってるんけでもねえんだけど」



世の中、そんなに子供がほしいものなのだろうか。

前にもテレビ番組を見ながら似たようなことを考えた記憶はあるが、世間的にはやはりそういうものなのだろうか。


特にそういう話題もなく、そういった行為すらない私と樹さんの関係は、やはり異常だということだろうか。


性的な事柄と触れる機会があまりないままに生きてきたので詳しいことはわからないが、男性というのはそれなりに、性的なものを発散する必要があるというのは聞いたことがある。いや、それが事実なのかどうかもわからないけれども。

でも、それなりの頻度で何らかの方法で、ひとりでだろうと他者とだろうと、溜まったものを発散する必要はあるらしい。

千波が割と仲の良かった女の子達が彼氏の話をしていた中で、そういったことを言っていた。交友関係の狭かった私は、その女の子たちと話したことはないけれど。

なんにせよ、男性というのはそういうものらしい。

でも、樹さんがそれらしい行為をしている様子はない。いや、そういうのは他者に悟らせるものではないとは思うけれど。それでも同じ家で生活していたら、ある程度察する事が出来てもおかしくないと思う。

なのに、そんな様子が微塵もみえない。

……やっぱり樹さんは、どこかの誰かと、私ではない他の女性と、そういう行為をしているのだろうか。


あのレシートも。

ブランド物のピアスをプレゼントした相手も、その女性なのだろうか。







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