未来へ
徒然なるままに(1/8)
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午前6時ジャスト。
寝室から出てきた樹さんに、「おはようございます」と挨拶をするところから天嶺家の一日は始まる。
私の起床は5時で、樹さんの起床よりも1時間前だ。というのも、手際の悪い私は、1時間はないと朝食の支度もできない女なので。
高校生の頃はいつも午前3時頃まで起きているタイプの人間だったので、結婚してからすぐの、本当に初めの頃はキツかったけれど、今ではこれが普通だ。
普通に、慣れるものだ。
何があっても、人は慣れる。
環境に、順応していく。
テーブルに朝食を並べる。
結婚後、樹さんは和食派だとわかったので、私が作るのはいつも和食だ。
樹さんは、甘くない玉子焼きが好き。
ほうれん草のおひたしも好き。
お味噌汁の具は豆腐とワカメが好き。
油揚げが入っていても良いみたいだった。
こうやって、少しずつ。
少しずつ、樹さんのことを知っていく毎日。
「今日は遅くなる。日付を跨ぐかもしれないから、夕飯は用意しなくて良い」
「わかりました」
食事の途中で樹さんが伝えてきたので、頷いた。寂しいけれど、仕方がない。お仕事だから。
一緒に家にいたって、一緒になにかするわけでもなければ、会話だってあまりない。
けれど。
それでも。
一緒に家にいるだけで、私は。
でも、そんなこと言えない。
学歴も職歴も大したことの無い、特に何かに秀でている訳でもない私みたいな平凡な女が、樹さんのような素敵な男性と結婚できただけでも、奇跡のようなことなのだから。
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