バニラに溺れる
「え、もっかい言って」(1/14)
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「え、もっかい言って」
『だから、美樹が昨日部屋に来たの。あんたに用があったみたいよ』
翌朝。裕美さんから連絡が来ているのに気づき、折り返したらそう言われた。
現在7時半。箏ちゃん葉瑠ちゃんと共に食堂に向かっている最中だ。
「栗石さん、なんか言ってた?」
『またくるって言ってたけど、あんたがいつ部屋に戻るかわからないから…』
ていうかあんたいまどこにいるの、と。裕美さんの声が耳元で響く。
「葉瑠ちゃんの部屋に一時的に居候中」
『はる…って生徒会長!?』
葉瑠ちゃんは有名だけど、同じクラスになったことがない人は大体“生徒会長”で認識している。ちなみに、男子は大半が“水無月さん”よびで、たまに“水無月”と呼ぶ人がいて。“葉瑠”と呼ぶのは有栖川くんくらいで、甘藍くんの“はるちゃん”という呼び方も、たぶん彼しかしない。
女子は名前や名前にちゃん付けする人が多いけれど、それでも“水無月さん”と呼ぶ人の方が多分過半数を占めると思う。
『生徒会長の部屋って箏と同じじゃなかった?』
「うん、そうだよ」
『生徒会長か…いいな、私も喋ってみたいわ』
「あぁ、裕美さんファンクラブ加入してたよね」
『何で知ってんのよ』
なんでって、それは、前に私がお風呂から出たら裕美さんが写真部から買った葉瑠ちゃんの写真見てたのを発見したからだ。
「…栗石さん、いつくるって?」
『今日の夜って言ってた』
「…わかった」
夜、一回部屋に戻ろう。栗石さんが私を尋ねてきた理由はなんとなく想像できる。
一緒に映画を見に行った日以来、話していない。あの日の帰りは結局栗石さんとは会わずに帰ったのだ。
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