バニラに溺れる
「元気、出して?」(1/16)

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「元気、出して?」


二時間目の休み時間。箏ちゃんがそう言いながらキャンディーを差し出してくる。


「くれるの?」

「うん」


ありがとう、とお礼を言って受けとる。箏ちゃんは明るく笑って、前の席の椅子を引き出して横向きに座る。


「疲れてるときには甘いものが良いんだよ」

「あぁ、それでキャンディー?」

「そう。良かったら舐めてね」


箏ちゃんみたいに周りををみて気を遣えたら、もしかしたら、高元くんを怒らせることもなかったのかもしれない。

昨日の高元くんは、明らかに怒っていた。あんなに冷たい目で見られたのは初めてだった。思えば、ああやって高元くんが私に一方的になにかを言って立ち去ったのも、初めてだった。


「…箏ちゃんは、友達と喧嘩したらどうやって仲直りしてる?」


毎日のように保川くんと喧嘩してる箏ちゃんなら、なにか仲直りのコツを知っているかもしれない。


「仲直り…?」

「うん。…ほら、保川くんとかとどうやって仲直りしてるのかなって思って」

「あー、…いや、あまり参考にはならないと思うよ?」


私は勝手に仲直りのプロだと思っていたけれど、箏ちゃんは苦笑いで頬杖をつく。


「でも、喧嘩しても毎日話しはしてるんだよね?」

「まあ、うん。ほら、部活のときだと甘藍とかいるとね…、空気ぶっ壊すからね…」


あぁ、なんとなくわかるかもしれない。甘藍くんのことは全然知らないけれど、ちょっと納得できる。


「有栖川も葉瑠も頭良いんだけど…なんかズレてるし」

「まあ、…確かに」

「それになにより、仲直りっていう仲直りをしてないんだよね」


参考にならない一番の理由としてはそれかな、と。そう続けた。



「私と保川の場合、喧嘩の次の会話がまた喧嘩っていうのも珍しくないの」






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