《秘密の共有》
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「松村さんってさ、なんかうざいよねー」
「頭は良いけど授業は来ないし」
「わかる、あいつ部活もあんま来ないし」
「ねー!あたしトランペットで同じパートなんだけどさぁ、オーディションで全然来ないくせに1stになってるしさぁ」
5月は衣更え前なのに暑すぎる。いまからこんなじゃ8月死ぬんじゃないかなんて思いながら登校すれば、
教室から、数人の女子の話し声がきこえた。
察するに、私の悪口大会らしい。まあなに言われても良いけど。いや、気分は悪いけど。
というか、行かなくても曲は吹けるんだから良くないか。だいたいにして、1stになったのは私のせいじゃない。なりたかっならあんたがもっと練習すれば良かった話だろ。
ガラッと扉を開けて中に入れば、彼女らは決まり悪そうにそわそわしだした。
「お、お…おはよう……松村さん」
その中のひとりが挨拶してきたので、返事をしておく。一応礼儀というものだ。
「……おはよう」
それきり会話は無くなり、彼女達は困ったように教室を出て行った。
きかれて困るならあんな馬鹿でかい声で悪口言うなよ。それになにより、言いたいことがあるならはっきり言いやがれ。
朝から不愉快になってしまった。
やっぱり早くに登校なんてするものじゃない。いつもみたいに時間ギリギリに来れば良かった。
とりあえず教科書を取り出そうと机の中に手を入れて。
「った…」
指先に痛みが走って咄嗟に手を出してみれば、指先から血が出ていた。
だいたい予想はつくものの、机の中を覗いてみる。
「あー…」
思ったとおり。
カッターの刃がテープで貼られていた。
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ユBOOKMARK
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