天然お嬢様と憂鬱な召使い(と、時々優雅な公爵)
[憂鬱な召使いは過去の自分と対峙する](1/16)

夕焼けの空の下、私はとぼとぼと歩道を歩いていた。

手には中身が一杯詰まったエコバッグ。

何処からどう見ても、買い物帰りの主夫、である。

そして実際その通りだ。

まぁ、独身なんだけどね。

いつもはこんな時間に買い物に出たりはしないのだが、今日はお嬢様が学校帰りに早乙女琳と図書館で勉強するそうで、帰りが遅くなる為私も夕飯の支度を急がなくて良いのだ。

それ故、いつもより遅い時間に買い物に出た。

でも、ちょっとのんびりし過ぎたかな…。急いで帰った方が良さそうだ。

そう思って歩みを進めようとすると。

前方から、ランドセルを背負った小学生が三人、楽しそうに笑いながら駆けてきた。

私は、思わず足を止めてしまった。

何の話をしているのか、笑い転げながら家に帰る子供達を、私は無意識に目で追っていた。

子供達は私の方など見ようともせず、そのまま曲がり角を曲がっていった。

「…」

…何やってんだろう、私は。

未練がましくガキ共眺めてたってしょうがない。

やっぱり、こんな時間に買い物に出ちゃ駄目だな。見たくない物を見てしまう。

早く帰らないと。

子供達に背を向けて、足早にその場を去ろうとした、そのとき。

「…秋、君?」



…俺は、誰かに声を掛けられた。



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