ハンド

★[修行開始](1/18)
「昨日なんか自殺しかけましたよ」
え?

「すみません何か」

「会わしてくれ」
「今ですか、」
「はい、」
顔色が一気に曇った。
しばらく思案した後、顔を上げた。
「分かりました、」

病室を出てエレベーターに2人で乗る。
……2?
下の方じゃんか。
エレベーターが止まり、扉が開いた。

鎧戸さんは2つ目の病室の扉を開けて中に入った。
ベッドには病院服を着た赤儀がいた。

「赤儀さん、」
俺の方を向くと目を見開きだした。
「出てけ!」

途端に今は無いはずの右手を抑えている。
「ぐわぁあ――」

暴れ出し、点滴の吊る棒が倒れ、中身が飛び散った。「腕が――」
「今すぐ、出てください」俺が病室を出ると鎧戸さんが赤いボタンを押した。
派手な音を立てて、鉄格子が下りた。
まるで牢獄だ。

病室に戻ってベッドに座る。鎧戸さんも入ってきた。体が重い。
「昨日もこんな感じでしたか?」
「いいえ、」

「俺のせいですか?」

「……そうとしか言えません」
「……赤儀は、俺のせいで……」
視界がぼやけて、目が熱くなった。
……気づいたら涙が流れ始めた。
「俺が、……弱いからだ。……俺が、」

少し時間が経ち、落ち着いてきた……。
しばらくして、鎧戸さんに背中をさすってもらっていたことに気づいた。
「ごめん、鎧戸さん」
「いいえ、」

「動けるようになるまで、どれくらいかかる?」
涙を拭いながら聞いた。


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