探偵みたいな高校生達(19th CASE)

密室の被害者と鉄壁のアリバイ(1/10)


――――――――――



『なるほど、キミはお父さんとお母さんが亡くなっているのか』


ヘルメスはなぜテロリストに協力しているのかを一弥に訊かれ、その質問に答えていた。


「そう。それで、施設にいた私は手紙が届いたの。『ゼウス』からの手紙よ。記された場所に行ったら、私達は選ばれた者だって言われた」


目を閉じれば今でも思い出す。
あの地獄のような日々から解放されたのを。
私達に手を差しのべてくれた『ゼウス』を慕う気持ちはこの人に理解できるとは思えない。

たしかに工藤さんは爆弾を壊した以外は私に優しく接してくれた。


『なるほどなるほど。キミの言う通り、『ゼウス』と言う人物は偉大な人らしいな。キミ達のような人に手を差しのべ、居場所を与えるとはね』


一弥は彼女の言葉に共感した。そのことがヘルメスにはとても嬉しかった。
大人にも、『ゼウス』以外に私達のことを思ってくれる人がいるのかも――と思い始めていた。


『なるほどなるほど、だいたいのことはわかったよ。
えっと、キミのヘルメスと言う名は偽りの名だろ?本名はなんと言うんだ?』


「――仁美。鳴沢 仁美」


『では、仁美くん。今からボクが話すことはあくまでボクの個人的な意見であって、キミが崇拝する『ゼウス』をどう思うかはキミ次第。
でも、話を聞いてくれるかな?』


一弥は自分の推理をいきなり話さなかった。
話すことで彼女の心を壊す恐れがあったからだ。
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