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目の前に可愛らしい女の子






「ふんふんふーん♪」


訳のわからない鼻歌を歌いながら俺の隣を歩く彼女はすこぶる機嫌が良い。

今日は彼女の誕生日だということで遊園地に来ている。
が、目を離せば何処へ行くか分からないのでドキドキハラハラしながら見ている。


俺の少し前を歩く彼女は時々思い出したように振り向き、俺と目が合えば満面の笑みで手を振る。
俺もそれに釣られるように微笑み答えるように手を挙げるとそれを確かめた奈都はくるりと前を向いてキョロキョロしながらアトラクションを眺める。

そんな奈都を見て和みながら、ふと別の方向を見ると何かのキャラクターが持っている風船に目が留まり、ジッ…と見ながら奈都が好きそうだな、なんて思っていると横から服をクイクイと引っ張られる。

横を見ると奈都がさっきとは打って変わって不機嫌そうに俺の服の裾を引っ張っていた。



「ん、何か乗りたいのあった?」

「っ………。」


訊ねてみるが首を横に振っている奈都に


「じゃあ何。」

と訊ねれば


「れー は、あーゆう子が好きなのかなー…って思って。」

そう言って、目の前にいるキャラクターの横にいる女の子を指差す。
確かに女の子は可愛い、がタイプではない。

指先にキュッと力を入れる奈都が可愛くて


「あは、嫉妬?」

笑顔が隠せないまま言ってやると


「っ!…違っ……」

「でも、それだったら奈都はあの着ぐるみに嫉妬してることになるけど、ね?」

「え、」


目を見開いて否定する奈都にクスクスと笑いながら言えばピタリと固まる奈都。

「奈都、風船欲しいかなーと思って」

そう言って緩く笑えば目の色を変える奈都。

「それともあの可愛い女の子がいい?」


とニヤリと笑いながら言ってやると


「あーもう、忘れて!」

と、わーわー騒ぎ出す奈都に苦笑しながら

「行こ」

と奈都の手を握って着ぐるみの方へ歩き出す。


その時、奈都の顔が赤かったのは見なかったことにしようと思う。






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