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伝われ、この想い





桜が散る今日、4月X日

今日は、入学式だ。


小学校の入学式のようにこれから始まる「学校」たるものに嬉々とすることはなく

中学の入学式と同様、これからの3年間恋をすることもなく勉強に打ち込むこともなくだからといって部活をするわけでもない、ただただ平凡な高校生活が過ぎると思っていた。

…今日この日は、だ。


そんな私は入学式を「普通」に終わらせて簡単なHRも「普通」に終わらせて

さぁ帰ろう。

と立ち上がったとき後ろから肩をグッと押され再び椅子に座る。

後ろの席は確かいなかった。
一番窓側の一番後ろの席だったはずなのだから。


ふ、と頭上が暗くなって見上げてみれば猫っ毛なクリーム色のふわふわした男の子。


「なに、」

「メアド、教えて?」


私が訊ねれば意外と簡単に応えてくれた彼は携帯のストラップを持ってぶらぶらと揺らしていた。

この男の身なりと雰囲気から教えるまで離さないだろうと言うことを悟った私は素直に携帯を差し出す。


「ありがとう。」


そう言ってふわりと笑う彼は今まで見たどの男よりも格好良く、可愛かった。


きっと私はこの頃から恋してたんだろう
悔しいが、この男に。



◆ ◆ ◆




あれから月日は経って今日は1月XX日。
もう1月も終盤にきていた。

そんな中、私は1人で1年間を思い出していた。

春はアイツと出会った。
夏はアイツと仲良くなって
秋はアイツが好きだと気付いて
冬は何も変わらず平々凡々

「…ふぅ。」

私は一体何をしていたんだろうか。
彼は私を変えた、私は彼に染まった。
バカみたいだと思う
前の私だったら即刻今の私は殴られてる。


「なーに溜め息吐いてんの、幸せ逃げるよ?」

そう言いながらズシリとのし掛かられてそのまま机に突っ伏す。

あぁ、もう。
こういうことをするから私の中に期待が生まれるんだ。

触れあったときいつも思う、「伝われ、この想い。」って。
思うより願うの方が近い気もする。


願うばかりで行動しない私の初恋は流れ星のように流れて消えてしまうのだろう。

その時までは「普通」に過ごしたいな、なんて彼にのし掛かられながら思った。






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