D - f o e


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寂しいだなんて
   言えるはずがない




…がちゃり


「……。」

また私は寝たフリをして彼が出ていくのを見送る。

どこ行くの? とか
どうしたの? とか

もうとっくの昔に聞く気は失せてしまった。



「…はぁ……。」

ため息を吐くのは好きじゃない。幸せが逃げるって言うでしょ?
でも、そんなこと気にならないくらい…いや、気にすることが出来ないくらい彼に呆れきっていた。

ずるずると布団から這い出て重い体を起こし、キッチンまで歩いていく。
眠気覚ましに水を飲み、さえた頭で考えてみる。

いつからこんなことになったんだろう。




あぁ、そうだ。思い出した。
彼が転職してからだ。


私と彼が一緒に棲み始めた頃彼は転職した。
彼が言うには「家賃が高いから。」だそうだ。

あの頃、私は幸せで彼の言葉を疑おうともしなかった。
今思えば、ただ利用されてるだけだ。

帰ったときに人がいないと寂しいだとか
鍵をわざわざ開けなくても開いてるとか

そんな仕様もない理由だったのかもしれない。
もしかすれば本当に愛してくれていたのかもしれない。
…どっちにせよ今、彼は私を愛していない。
今日も浮気相手のところに行ったのだから。

そうやって考えているとマイナスにしか考えられなくなってきて、「…ふぅ。」と大きく息を吐きもう一度寝ることにした。




◆ ◆ ◆




私が次目覚めたのは夕方頃だった。

そうして暫くすると玄関のドアの開く音がした、と同時に「ただいまー」と間延びした挨拶が聞こえる。

そのまま部屋に入ってきて驚いた様子で私と部屋を見比べ

「なんかあった?」

と心配そうに訊ねる彼。


「……。」

そんな彼を虚ろな目で見詰め黙っていれば手を握られ

「なぁ、どうしたんだよ。」


と、さっき以上に必死な声で訊ねられる。


圭が居なくて寂しかったんだよ。



そう言えば一緒にいてくれるの?
詰め寄れば離れるんでしょ?

なら、黙っているしかない。
私はニコリと笑い、

「何でもないよ、疲れてたの。」

そう言って部屋の片付けを始めた。








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