D - f o e


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嫌いなもの?
決まってるじゃないか、
      自分自身だよ







「なー、
何か嫌いなもんねーの?」

「は?」

いきなり聞いてきた春に嫌そうな顔をしながら尋ねる。故意に、だ。


「『は?』じゃなくてさー
キ・ラ・イ・な・も・のー。」


「何で。」


「何でって、」


意味が分からない。
何を今さら言ってるんだ。


「だってお前の弱点知らねーもん!」

「は」


なんだよ もん って。
馬鹿かお前は、

目の前でそう叫んだ春を一瞥して

「ほんとにわかんねーの?」


「うn「何年友だちやってんだよお前。」


「ゔ…。」


わざとらしく溜め息を吐いてやると小さく呻いて俯く春。
その彼を見るのが楽しい、…どうやら俺はSみたいだ。


「お前だよ。」


軽く笑いながら言ってやると「え…」と言いながら春はバッと顔をあげる。

するとその顔はひどく傷付いていた。


「…嘘。」


素直に言葉の出る俺はSでも、春の傷付いた顔には弱いみたいだ。


「そっ、かー…。」


ほら、春の笑った顔を見て顔の緩む俺がいる。

そんなとき、やっぱり俺は春が好きなんだと自覚する。

本当は春に嫌われるのが怖くて好きだと言えない自分自身が大嫌いだ。


だから春に言ってやる。

「春?嫌いなもの、だよな?」

「え、ああ。
でも あんの?」

「決まってるだろ、
   …自分自身だよ。」

笑顔で。






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