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死神さん、
  私をしてください






「…殺してください。
  お願い、します。」


震える声でそんなことを言う女。




─そんな声で言ったって説得力なんてないのに。



「……。」



思ってはいても口には出せずに黙り込む。



…言えるはずがない。

俺の姿は彼女には見えていない。
言ったって俺の声なんか届くはずもなく、余計に辛くなるだけだ。



「…なんて、」


彼女は ふふ。 と笑い


「言ったって返事してくれないけど。」


そう言ってこちらを見つめる。



「う、あ…」


彼女の言葉に少し狼狽え、声が出る。
普通は人間には声なんて聞こえないし、姿も見えない。

しかし彼女は


「声、出るじゃん。」


なんて言ってニコリと笑う。
そして手を伸ばして


「こっち、来てよ。」


と俺の手を握った。
彼女の手は冷たかった。しかし何故だか暖かくって涙が零れた。


「何で泣くのよー」


と、困った顔で笑い俺の涙を拭ってくれる。



そして唐突に、言った。


「死神さん、私を殺してください」



そう言った彼女は優しい笑顔で驚きに目を見開いた俺の頬に軽くキスをすると


「貴方になら殺されても大丈夫そう」


と、無邪気に笑った。



そんな彼女につられて俺も微笑む。


─ この人は殺したくないな…。


なんて、俺にしては珍しいことを思いながら。








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