10th position
02『どこの御曹子だよ。』(9/13)
「うわっ!なんだこれっ!?」
悪い予感的中だ。
ドラム式洗濯機の下からも、扉からも、洗剤投入口からも、水漏れ!
もちろん、床は水浸し…。
(ーーあり得ない。)
洗濯機は止まっているけど、予想を超える泡の量に思わず横に転がっている洗剤のボトルを持ち上げてみた。
確かこの前、新しいのを開けたばかりだったはず。
「…空になってる。」
しかも、それだけじゃない。塩素系漂白剤のボトルも近くに転がっていた。
俺は恐る恐る、洗濯機の扉を開けて、泡の中から一枚のネイビーのシャツを救出する。
「なんだっ、これ!」
いやいやいやいや、驚いてるわけじゃないぞ。予想通りっていうかなんと言うか。
俺のネイビーのシャツ。
無地だったはずなのに、所々色が抜けて、絞り染めみたいな模様入ってる!
「おいっ!渚!どうしてくれるんだよ、これ!」
荒々しく階段を駆け上がり、渚の目の前に絞り染めになってしまったシャツを広げて見せても、渚はきょとんとしている。
「え?何?どうしたん?」
「どうしたん?じゃ、ねえ!お前、洗剤どんだけ入れたら気が済むんだ?!見ろ、このシャツ!」
そう怒鳴っても、渚は目をパチパチと瞬かせ「え?なに?ウォッシュ加工?」とか抜かしやがる。
「アホか!ちゃうわ!よく見ろ!このシャツ無地だったんだぞ。」
「え?そうなん?でもカッコええやん、ユーズド感半端ないね?」
「ええわけないわ!」
思わず、渚の頭をパチンと叩いてやると、「痛っ」と、渚は頭を抱えて上目遣いに見上げてきた。その顔が直と重なって、また苛々する。
「もー、どつかんでもええやんか。」
「うっさいわ!」
俺はめちゃめちゃ怒ってるのに、渚はどうしてか、ニコニコしている。
「何が可笑しいねん!」
「ほなって、ゆっきー、さっきから、関西弁になってるんやもん。」
「ーーえ?」
そうだったか?あまりにも頭に血が昇り過ぎて覚えていない。
「ーーそんな事より、早く床拭けよ!」
「はーい。」
ああもう、食洗機はまだ大丈夫かもしれないけど、洗濯機は…あれ動くんだろうか…。
取り敢えず、床の水分を拭き取らないと…と、黙々と二人で手を動かした。
今日の洗濯どうすんだよ…と途方に暮れながら。
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『出逢えた幸せ』SS集(2015/02/14UP)
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