昔に戻れたら

[一通の知らせ](1/15)
“まもなく、20番線に10時36分発、東都発大山行き、新幹線あおぞら11号が入線いたします”



駅のホームにそんなアナウンスが流れる


7月の平日だというのに、駅構内は多くの人でごった返していた


時期的に高校生以下は学校が夏休みに入った頃なのだろう、家族連れが多い


最低でも約1ヶ月も遊べる学生や子どもたちがうらやましい


私はボストンバッグを持ち直し、新幹線の切符を片手に新幹線を待つ人の列に並んだ


こんな平日の朝に新幹線に乗ろうとしている私は旅行ではない


今日から3日間、仕事を休んで田舎へ帰るのだ


それからまもなく、紫色の車体が入ってきた


何回見ても派手な色だと思う


誰がこのデザインにしたのかは定かでないが


新幹線は私たちの目の前で止まると、ドアを開いてこちらへ来るよう出迎えてくれた


切符を確認し、車内へ乗り込む


自分の座席を見つけると、ドカッと座った


思ったより車内はガラガラだ



(このまま戻らずにいたいな……。とりあえず仕事のことは絶対に考えないようにしなきゃ。あんな仕事、考えるだけでも憂鬱だしバカらしいし鳥肌もんだし)



窓の外を見ながらため息をつく


私がこんな中途半端な時期に帰るのには訳があった

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