此れが麻美という女

私は麻美という女(1/1)





初めまして。
麻美(あさみ)と申します。



私は旧帝大の学生として勉学に勤しみ
塾講師や家庭教師として中高生の指導をし、
気心の知れたサークル仲間と飲みに出歩く、
本当にどこにでもいる普通の大学生でした。





都心の喧騒を逃れた場所に佇む高級住宅街。
そこに続く道を左に折れた、
昭和の香りが残る繁華街で働くようになったのは
ちょうど1年前のことです。




私の働く場所は、
その昔、高級クラブの立ち並ぶ夜の街で
ホステスとして名の知れていたママが 開いた
決して広くはないラウンジ。


高級感のある店内を
オレンジの間接照明が照らし、
小さく流れるジャズが暗い夜を和らげます。





夜のお仕事と一口にいっても、
様々な業態がありますが、
私のお仕事は、

お客様にお酒を作り、
自分のグラスにワインやシャンパンを注ぎ、
お客様の話に耳を傾けて、
楽しい時間を過ごすこと。


そんな風にして、
週に二回のお仕事で、
ワンルームマンションに
学生の女が一人で暮らすには
十分すぎるほどの額をいただいています。





来年からはとある企業で、
営業をさせていただくこととなり、
おそらく今年度でこのお仕事も終わりです。



私の体験したお話を
顔も名前も知らない誰かが、
こっそりと楽しんでくだされば光栄です。






2016.08.04 麻美








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