此れが麻美という女
麻美と呼ばれている女(1/2)
第2章 いらっしゃいませ
携帯が震えて、電話番号にメッセージが来ました。
「ご飯に行きましょうか」
お店に入って3週間、
ママが紹介してくださったお客様から
頻繁にお食事のお誘いがくるようになりました。
40代後半、
大きな会社の社長のKさんです。
「是非。何時にどこにいたしましょう」
「駅に、19:00で」
携帯を閉じて時間を見ると、
16:00。
お風呂に入れるね、
なんて考えながら、
いそいそと用意を始めます。
6月の湿気に、
首筋に髪がまとわりつく季節。
深くスリットの入った
紺のタイトなドレスを選びます。
私が持っている中で、夜に着て行くのは2着。
当時浮気された彼を見返したくて
買ったこのドレスと、
成人式の二次会で身につけた黒のドレス。
どちらも私の持っている服の中では
1番値がはる洋服です。
そのドレスに大粒のパールのネックレスを。
タバコの匂いがついてしまうのは惜しいけれど、
30代から40代のお姉さまたちと並んでお仕事をするのに
数千円の普段着ではどうしても浮いてしまうから。
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