花束
花束(1/9)






幸せはその只中にいる時には気づかない。

指の隙間から零れ落ち、目の前から消えてしまいそうになった時、やっと幸せだったのだと気づくのだ。

それだけに幸せであっても人はその幸せを大事にしようとはせず、それが“当たり前”だと思い込み、蔑ろにする。

だけど当然始まりがあれば終わりが来る。

幸せが終わり、不幸が訪れた時に人はやっと慌てだし、もう微か遠くにまで消えかかった幸せをなんとか引き戻そうと醜く手を伸ばす。

そんな見っとも無い人間の前で運命はあっさりと口を閉じ、行く手を阻むのだ。

その人にとってどれだけ幸せが尊いものであっても。

それは平等だ。

それならば、反対はどうなのだろう?

今まで不幸の底に沈んでいて、希望の光さえも見えなかったような人は。

人生は幸福と不幸の繰り返しと誰かが言った。

もしも本当にその通りならば、そんな恵まれない人はきっとその後の人生は幸せに満ち溢れるだろう。

その幸せが尊く、大切なものであるとその人がよく理解し、気をつけていたならばその幸せは簡単には逃げない。

運命だって鬼ではない。

少しは目を瞑り、サービスくらいしてくれる。

そんな幸せを噛み締め、誰かの隣で笑うのだ。

そう、人生とはそんなものなのだ。

幸せとは決して大きなものではない。

日々に転がる小さなものの積み重ね。

美味しい物を食べた時の幸せ。

素敵な時間を過ごした時の幸せ。

好きな人といれる幸せ。

どれもシチュエーションは違えど全て幸せだと感じる。

そんな些細な物を幸せと感じられるか。

それとも単なる日常の一部と捉えるか。

それは人それぞれだが、幸せの積み重ねに多大な影響を与えるのも事実だ。

日頃をどのように生きているのか。

それが大きく運命を分ける。

まぁ難しいことを沢山言ってしまったが。

何の格好もつけずにざっくりとした言葉で表すのならば。

今まで辛い思いをしてきた村上皐月にはこれから有り余るほどの幸せが訪れるであろう、ということだ。







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