朝目覚めると隣に見覚えのない顔の男が、規則正しい寝息を立てて眠っていた。
誰だこいつ、とは思いながらも脱ぎ散らかしたそれを身に付けた。
部屋を出よう、そう思ったが男が起きた。
「もう帰んのかよ、亜羽蝶(アゲハ)」
男が声を掛けてきたが敢えて面倒で私は無言で部屋をあとにした。
---黒水亜羽蝶 (クロスイ アゲハ)
それが私の名前だ。
私は自分の名が嫌いだ。如何にもこの現代の、所謂 キラキラネーム とやらにしか思えないからだ。
何がアゲハだって、という風に名前を呼ばれる度に思う。
今度からは何か違う名前、偽名を使おうか…。とは思うが考えるのも面倒かな。
自分が好む名前もないしなぁ。
あ、瑞樹がいいな。
当たり障りなく、男女共に使われているからいいかな。
とか、考えながらもホテル街を抜け大通りに出てきた。