バイオバザード2035 THE END
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死者の群れ。何ともおぞましい響きである。映画やコミックが、まだ当たり前の様に人々の手に入っていた頃、死者の群れが地球を埋め尽くすストーリーは腐るほどに作られていた。人々はまさかそれが実際に自分達の身に起こるなど予想すらしていなかっただろう。

だが、パンデミックは現実となった。人を狂人へと変異させるウィルスは愚かな野望に冒された金持ち達の手によって生み出され、 何の罪もない普通の人々に災厄をもたらした。人々は必死の抵抗を試みたが、人類が敗北するまでにそう時間を要しなかった。

何とか生き延びた人々も、日々ウィルス感染者達との戦いに明け暮れていた。減り続ける人類、増え続ける感染者達。未来のない不毛な戦いに人々は絶望していた。安全な場所などどこにもない。誰も助けになど来ない。そんな思いが人々から生きる力を奪い取って行った。

だが、絶望に飲み込まれることを真っ向から否定した人々も少なからず存在していた。人々は手に武器を取り知恵を振り絞って、敵に立ち向かった。あふれんばかりの怒りと憎悪を敵に叩きつけた。憐憫などとは程遠い激情の濁流をもって生きる糧としていた。

「まあ、あんな化け物連中に負けてやらにゃならない道理はねぇってこった。」

その男、那須は頭をボリボリ掻きながら言った。

「はァ?何よいきなり。アンタとうとうボケたの?」

隣で海原を眺めていた長澤が眉をひそめて言った。

「いやな、地球上の人類は8割以上が死んじまったろうってな。そんな中で俺達は生き残って、こうしてクルージングと洒落こんでる。」

それを聞いた長澤は、フンと鼻を鳴らして手摺に背中を預けた。クルージング?こんな無粋な鉄の塊で?長澤はフッと笑った。

太平洋に浮かぶ木っ端の様に見えるのは、れっきとした国連軍艦隊であった。その旗艦「くずりゅう」艦上で、長澤と那須はヒマを持て余していた。くずりゅうの後方には、ヘリ空母「ひゅうが」さらに補給艦「スキールニル」が続いていた。

「あの子達、大丈夫かしらね

「あ?」

「美由紀達よ。」

ああ、大丈夫だろう。筋肉ゴリラに女サイボーグ、さらにはセーラー剣士も一緒だ。可愛らしい衛生兵に、CIAのパツキンメガネ、トリは半面マスクのコミュ障野郎もいる。心配いらねえよ。」

那須は眠そうな目でヘラヘラ笑いながら言った。長澤は那須のアダ名のセンスは意外に悪くないと思った。














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