佐桜「…雪音。何を思い出したの?教えて?」
なるべく雪音を刺激しないように、優しい声色で、雪音の背を擦りながら佐桜は言った。
雪音「私は…雪菜『様』のクローンだった…でも、それより前の事も、思い出したの…」
そう言う雪音は、今にも崩れてしまいそうだった。
佐桜「それよりも前?」
レミリア「どういうこと?貴女が雪菜のクローンになる前があったってこと?」
てっきり、雪菜のクローンだと言うことなら、雪音は雪菜をベースにして作られた生命体だと思っていた。雪音はレミリアの言葉に頷く。
雪音「私は、確かに人里で お父さんとお母さんと暮らしてた…春川 白音(はるかわ しらね)という名前で。だけど、私と私の家族は、あの日の前日、妖怪に殺されたの」
あの日の前日。それは、雪音が雪音として、魔竜郷を訪れた日の事だろう。
雪音「もう春だって言うのに、身体が凍えてしまいそうになったのを覚えてる。そんな時、私の亡骸の前に現れたのが…雪菜様だった」
雪音がそこまで言うと、霊夢が納得したように口を開いた。
霊夢「なるほどね…雪菜は貴女に自分の力を分け与え、『春川 白音の亡骸を母体として、自分の力を模倣した 白川 雪音』を作り出した…」
霊夢の推理は当たっていた。雪音は0から作られたのではなく、生き返る形で、雪菜のクローンとなったのだ。
雪音「私が私になった時に、あの人は『貴女の使命は、白川 雪音として 天川原 龍。紅 雅史。佐藤 俊樹を監視する事。春川 白音としての記憶は消させて貰うわ』って言ってた。私は、みんなの…お兄ちゃん達の敵だったみたい」
雪音はそう言って、涙を浮かべながら自嘲的な笑みを浮かべた。