風船のなか
[風船のなか](1/7)
風船のなか
昨日と同じ時刻に、学校から二人の少女が出てきた。
いつもと同じ道を、その年ならではの騒々しさで二人は話をしながら歩いて行く。
周り者が不快感を覚えないのも、中学生という免罪符があるからなのだろう。
ひとりの少女が口を開いた。
名は、稲葉だった気がする。
前に、やはりこの道を通ったときに、「人と違ったこの名前が嫌だ」としゃべっていた。
稲葉に話しかけれた少女の名は由香だったように思う。
こちらは、ごく普通の名だ。
軽い足取りだが、演技がかったように重い口調で、稲葉は由香に言った。
たかだか、十五年しか生きていない者にそんな重い悩みがあるはず無いだろうが。
「数学を友達に教えていて思ったんだけどね・・・。○時間を○分に直すんだったら60をかければいいじゃん」
由香は、軽く二度頷いた。
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