冷の彷徨
[霊気薬](1/4)
部屋の中、1つの窓の外をみる影、目外志禾だ。

この家にいるときは基本的に窓の外を見てるか本を読んでいる、それが志禾だ。

幽霊が本を読めるのか、結論を先に言うと読める。
 幽霊は対象が目の前にあれば、その物を読んだり、食べたりする事ができる。
もちろん人間の目にはなにも変化はない、しかし確かに幽霊は対象を満喫している。

昔からお供え物という習慣がある、もしかしたら昔の人は霊感が強かったのかもしれない。

そういうわけで幽霊、志禾は本が読める、本を読んでは窓の外を見る、そんな毎日の繰り返しだった。

「しのぎー」
志禾に声をかけたのはこの家にいる幽霊、細読 奈利だ。
「いっつも何見てんの?」
「……木、かな」
志禾は無口だ、別に会話が苦手というわけでもない、ただ、そういう性格なのだ。
「ふーん」
そういって奈利は走っていった、質問のためだけに来たようだ。

子供は無邪気だ、特にあの少女、細読 奈利は中学1年あたりになると言うのに、ひときわ無邪気だ。
 1年あたりというのは、幽霊も成長する、死んだ年齢の姿に一時的に戻ることも可能だが。

「無邪気・・・・透明・・・か」
志禾は、ポツリとつぶやいた。
__________________________________
数分前、玄関にて

「大丈夫だって」
「いや、行く」
「ただの散歩だって」
言い合っていると彩葉が入ってきた。
「未吉ったら心配しすぎ」
「うっさい」
あの事件から数日間、家の中でも奈利につきまとっていたのは、彩葉の方だというのに……
「わかった、外出たいし」
奈利がやっと折れた、あの事件以来
彩葉の言い分によって外出を控えていた奈利にとって外に出たい気持ちは、いつも以上だろう。

そんなわけで俺は奈利と散歩している。
「ねえ未吉」
「どうした?」
「ちょっと、行きたい場所があるんだけど……いい?」
「いいぞ」
「やった!行こう♪行こう♪早く行こう♪」
そういって奈利と俺が来たのは、近くの図書館だった。

「本が読みたかったのか?」
「だって未吉達が学校いったら暇なんだもん」
「そうだろうな」
俺が学校にいっている間、家にいるのは奈利と志禾だけだ、志禾じゃ奈利の話相手になるわけがない。
 ちなみに彩葉は俺と一緒に学校にいっている、別に行かなくてもいいのに、いつも俺の隣にいて、俺が寝ると、
毎回起こしてくる、そのくせ真面目で、一問たりともテストの答えを教えない

「どれだ?本」
「えっとねー、これ!」
奈利が指さしたのは一つのファンタジー小説で、今小学生、中学生の間で流行っている小説だ。
 流行っているのなら無いはずなのだが、図書館側も多く保有しており、人気すぎてほとんどの子が1巻はよんでいる、それぐらい人気なのだ。

それもあって奈利は一つのこった1巻と数冊の気になった本を指差した。

それを受付で借りたとき、
「ミヨじゃん、こんなところで珍しい」

声をかけてきたのは、大志寺 志織 (おおしじ しおり)だった。
 家が神社で霊感もある、俺の幼馴染だ。
霊感があるとはいえ、こいつにもまだ死神のことは言っていない。
 高校も同じ学校なのだが、俺が寮に住み始めた事、クラスの階も違うことから、最近はあまりあっていない。

「珍しいってなんだよ」
「だってミヨって本とか全然読まなかったじゃん」
ちなみに、ミヨってのは志織が勝手につけた俺のあだ名のことだ、付けられたのが小さい頃だったのでなにも
 思わなかったが、単純すぎるし、なんだか女っぽい。

つけた理由は未吉くんってのが言いにくいだったのだが、呼び捨ての今はほんとに意味がない。

「それにしても……ミヨは本当に小さい子にすかれるねぇ」
志織の視線は確実に奈利を捉えていた。
「昔っから近くにいるよねー小さい子」
「そんな事、俺以外にも言ってんじゃないだろうな、みんな怖がるぞ」
「言ってないよ、霊感があるってのは伝えてるけど、それに未吉だって霊感あるじゃん」
「少しな」

死神に憑かれる以前も俺は少量ながら霊感を持っていた、まあぼやけた感じにしか見えなかったが。
「今日は子供が二人か、ほんとになんかあるんじゃない?」
「ねぇよ」
「どうかなー」
「てか何しに来てんだ?また本巡りですか?自分の世界にどっぷりですか?」
「うるさい……そだ今日は本借りに来たんだった」
「今日も、だろ」
「えー最近は来てない方だよ」
「何回ぐらいだ」
「週4」
「多い」

そんな会話も終わり、俺は奈利と図書館をでた。

「みよ、あの おねえちゃん、霊感があるの?」
「ああ、結構あるぞ……てかお前までか」
「なにが〜?みよ」
「それだ!!みよって言うな」
「いやだ、気に入ったもん」
「あのやろう余計なことを」
それにしても子供とまで言い当てるなんてまた霊感上がってんじゃねぇか、あいつ、人数まではっきり。
……人数? 確かあいつ二人って……
おそるおそる後ろを振り返ると、ちょっと後ろに、
一人の少年がいた。

                             




- 6 -

前n[*][#]次n
/9 n

⇒しおり挿入


⇒作品?レビュー
⇒モバスペ?Book?

[編集]

[←戻る]