CALL
[通話【7】](1/1)
互いの存在すらわからない。
そんな
まさに見えない相手との対話は
どれほどの恐怖を感じさせるのか……
警察官として数年
職務を全うしてきた俺ですら
戸惑う
緊迫した状況だ。
[ダレダ……ハヤクイエ……]
ボイスチェンジャーで変わった様な
機械仕掛けのこの声が
更に選択を鈍らせる。
「お前が誰か知らないが……その子に何かしたら……」
息を飲むギリギリの空気感。
部屋の時計の音が妙にはっきりと聞こえ
強気な返事も僅かに震えている。
[ナニカシタラ?ツギノ《コトバ》ハナンダ?]
は
早く言え!!!
きっとこいつは犯罪者だ!!!
この通話次第で彼女の運命が変わる!!!
恐れるな!!!
今、救えるのは俺だけだろ!!!
[スクエナイヨ?オマエニハ。]
不気味に笑いながら話すその言葉が
過去の俺自身の生きてきた道を
まるで嘲笑っているかの様で
俺は立ち尽くしたまま時間が止まる。
救えない……
救えない……
俺は誰一人
救えない……
【こ、こうするしかなかった……】
【お……お前……自分のした事が……】
【じゃあ……お前は俺を救えたのか!!!】
【そこを動くなよ。】
【ゆ、友情より……自分が大事か……やっぱりな。】
や
やめろ……
今思い出す事じゃない……
[ココハ……ベツセカイダ……]
べ
別世界……!?
[カカワルナ……ハヤクデンワヲキレ。]
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