CALL
[通話【3】](1/1)
人の人生に首をつっこむほど

余裕すらないのは明白なのに

その妙にリアリティーのある会話に

興味がわいたのか

俺は自然と状況を確認しようとしている。

やはり

まだ昔の自分に未練が……






[暗い……怖い……誰にも会いたくない……]






同じ間隔で並べられた

その言葉たちに

俺は困惑していた。





「名前は?」





もしかすると

この電話の相手は気が動転していて

うまく話せなくなっている可能性がある。


俺は彼女を落ち着かせ様と

また冷静にゆっくり話しかけた。





「名前を言いたくなかったらそれでいい。両親は近くにいるのか?」





誘拐?

失踪?

それとも……










「サナ……サナ……]





さな?





「それは名前か?サナって言うのか?周りに何かあるか?」





俺がそう声をかけた瞬間だった。


彼女の声が

突如

思わぬ小さな奇声へと変わる。










[ひっ、く、ぐっ、ぐぐ、き、キィィ、ぎぃぃ……]








犯罪に巻き込まれた少年少女なら

耐えられない状況下では

言葉にならない声を出すのは当然で

まさに今の俺はそれと似たものを

その少女に感じとっていた。





「落ち着け。ゆっくり、ゆっくり深呼吸をするんだ。大丈夫。そうだ……最近楽しかったことはあるか?」




気をそらす事は

動転した心理を変える力がある。

場面転換をすれば。





「俺は……そうだな。最近、面白い映画を観たな。タイトルは何だったか……あの、あれだ……まぁ、忘れたけど。」





この通話の謎が

俺を迎撃するかの様に

場面転換する。





[ひっ……くっ……と……]







どうしたんだ!?














[と、隣に……ひ…人が……倒れてる……]






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