CALL
[通話【1】](1/1)
あまりにも平凡で

あまりにも在り来たりな人生だと

昔の友人はよく俺をそう語る。


優秀な大学を卒業したのにだとか

元警察官だから勿体無いだとか

墜落人生だとか親戚には言われてるのに

友人には酷い言われ様だ。


まぁ

間違いなく大丈夫だとは必ずしも言えない。

歳も30を超え

夢見る世界はとっくに消えたんだ。

だから

ハローワークすら職の数を減らす一方で

現状は逼迫している。





「だから何なんだよ。」





一軒家の自宅には

一人暮らしらしく

ホワイトのテーブルに缶ビールが置いてあり

それを片手で飲みながら

テレビの政治家たちを見て嘲笑った。





「この国はとっくに終わってんだよ。」




俺にそんな事を語る権限が?

いや……もちろん無いに決まってる。


深夜零時を回った頃に

酔った大人の戯言。

つまらないだけの戯言。




そんな時だった……

しばらく鳴りもしなかったiPhoneから

知らない番号を画面に光らせ

酔った俺を呼んでいた。





「もしもし?こんな夜遅くに誰だよ。」




あぁ

またイラついてる。

知らない奴とでもケンカを売ろうってのか?

正気の沙汰じゃないな。





[も、もしもし……




携帯から聞こえてきた声は

予想に反し

若い少女のか細い声だったんだ。





「は?間違いでかけてるなら直ぐに切れ。さもないと警察に電話するぞ。」





別に脅しのつもりじゃないが

ガキの相手をするほど暇じゃない。

わざわざ間違い電話なんて……









[た、助けて……









その言葉で


酔いは一気に冷め


消えかかった昔の善なる部分が


小さく目を覚ましていた……





「だったら警察に電話しろ。」





鋭い眼光が

また頭をリアルに戻す。






[もう……掛け直せない。ここから出られないから……





この言葉から

長い

長い

不可思議な通話が

スタートした。








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