記憶の荒野
1[火星の聖戦](1/60)
有機体再生装置のダウンロードが終わる瞬間というのは、何回経験しても慣れる事の無い厭な感覚をもたらすものだ。
それは、譬えるならば…溺れる刹那の、冷水が肺に満たされ息が詰まる感覚に似ている。
21世紀末に登場した東ロシアの詩人シルバエフの言を借りれば、「進化途上の最初の魚類が地上に上がり、此処は自分の場所では無い事に気付いた瞬間のような」驚きと絶望感に満ちた感覚だ。
人類が遠距離移動の方法論として、有機体データの送信と、その有機体再生技術に関するテクノロジーを開発し、最初の実験台として選ばれたボノボの「マーフィー」が、もし人間の言葉を話せれば「何処のくそったれが、こんな拷問装置を考えだしたんだ?」とNASA職員に詰め寄りそうな具合だと言えば分かりやすいだろうか。


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