●[古くて苦い思い出](1/15)
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お通夜はたくさんの人で溢れていた。
お見舞いに来ていた優生の友達と病室で何度か顔を合わせていたが、今日は何も話さなかった。
優生のお母さんとは何か話していたけれど。
そんな時、声をかけられた。
「あの、優生の…彼女さんですよね?」
振り返ると、遊園地で会った元カノがいた。
「突然ごめんなさい」
「優生の元カノさんですよね?」
「……ご存知だったんですね」
一瞬フリーズしたが、何だか安心したのか少し微笑んだ。
「優生から聞いてましたから」
「昨日優生の親友から私と別れた本当の理由を聞いてしまって……あなたにこんなのことを聞くのは失礼だって分かってるんですけど……何か聞いてないですか?」
「優生はあなたのこと本当に大切に思ってました。遊園地に行ったとき私達は付き合ってなくて、あなたに会いたいって言うからついて行ったんです。自分が幸せに出来ないから、だから幸せになってほしいって願ってましたよ。」
先程とは打って変わり、大きな瞳から涙が零れ落ちた。
優生はこの人と付き合っているときに病気になり、死を覚悟して別れたんだ。
悲しい思いをさせないために。
たくさんの思い出を残す前に。
大好きだったから。
「なのに、どうしてあなたとは………」
きっと私が死ぬ直前まで優生と付き合ってた理由を聞きたいだ。
そう直感が動いた。
「優生に告白された時、つき合うのはやめようって言われたんです。それを私が押しきって」
「……もし私も別れるときに本当のこと知ってたら絶対…」
別れなかった。
きっとそう言いたかったんだろう。
私と優生は運命だって信じていたのを否定された、そんな気がした。
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