玉露の悩み
[夢か幻か](1/10)
引っ越してから二週間程度で新しい生活にも慣れてきた。

大学では友達もできたし、楽しくやっていけそうな予感がする。

そして、新しくできた友達から合コンなるものの誘いがきて

「それでは、新入生の入学を祝って…乾杯」


早速、三対三の合コンに参加している。
こうゆうことに興味はないけど、友達がストレートに『人数が足りないから来て』と気持ちよく言ってきたので、引き受けてしまった。
私の機嫌を伺うような誘い方をしてきたら、断るとこだったんだけど。

何はともあれ、参加した以上は初合コンを楽しもう。この自己紹介を済ましたら、楽しもう…。

幼い頃は気にならなかったけど、物心つく頃から段々自己紹介が恥ずかしくなるようになった。未だに慣れない。

「初めまして。このような会は初めてで緊張してます。名前は、あの……『タマちゃん』って呼んで下さい」

どうせ今日だけの付き合いだ。本名なんか知らなくても誰も気にしないだろう。

「あんた、何を恥ずかしがってるの」

すかさず友達が突っ込む。

「この子、名前がとても珍しいから、恥ずかしがってるんですよ。名前は『玉露』ってんですけどねー、好きに呼んでやってください」

「ちょっと。何でばらしてんのよっ」

知られてしまった。知られたからどうってことはないけど、なんとなくイヤ。

だけど、男性側の反応は変わったことはなく、『珍しいね』とか『カッコいいじゃん』とか、気にするような様子はなかった。

……、なんか好印象持てちゃったかな

それから一通り自己紹介が済むと、男性側がリードして話を広げてくれた。

自分達は二年生で、サークルではあんなことやこんなことやってるとか、いろんな話をしてくれた。
面白い話をしてくれけど、実は右から左に聞き流している感じだ。

「玉露ちゃん。さっきから全然飲んでないじゃん」

一人の男性が声をかけてくれた。飲んでないとは、目の前に置かれたビールのことだろう。

「最初にちょっと口を付けたけど、苦くって…」

未成年なので飲めませんと言ってもよかったけど、私はそこまで空気を読めない子ではない。

「気がつかなくてゴメンね。これは俺が飲むから、代わりの頼みなよ」

そう言うと、彼は飲み物のメニューを渡してくれた。けど、どれがどんな味か解らない。ソフトドリンクでは場は少し冷めそうだし。

「あの…、甘い飲みやすいのってどれですか」

メニューをくれた彼に聞いてみた。

「どんな甘さがいいかな。ミルクは飲めるの」

「はい、大丈夫です」

私が答えると、彼はイチゴミルクを頼んでくれた。それから間もなく飲み物が運ばれてきた。

見た目はとても甘そうだ。一口飲んでみる。

「あ…、美味しい」

ほどよい甘さと口当たりの良さ。これは好みかもしれない。

私はおかわりをし、その次も同じものを頼んだ。

段々身体が火照ってきて、気持ちも良くなったきた。そうか、これが酔っ払うってことか…。

私は気持ち良さと場の雰囲気に任せて、そのまま飲み続けた。




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