Unexpected(1/6)
思わぬ形で実ることもあるらしい。
なんとなくいい雰囲気なんだと思ってた。下の名前で呼び合ってるし、二人で遊びに行ったこともあるし、笑った顔もよく見せてくれてたから。
でも、俺の勘違いだったらしい。好きな人がいるなんて知らなかった。みんなが軽い下ネタで盛り上がってる中、俺だけは上の空だった。
「先輩また宅飲みやりましょーね」
「お邪魔しましたー」
「また大学でなー」
AM8:00
酔い潰れてしまった奴も普通に眠ってしまった奴も、朝になって次々に帰っていった。
昨日の夕方から始まった、同じサークルの男女6人での俺の家での飲み会。いつも通り他愛のない話で盛り上がって、飲んで、楽しく過ごしていたと思う。
−−ただ一人、俺を除いて。
「はー……」
ため息をつきながら、みんなに掛けていたタオルケットを拾っていく。
"啓太先輩、こいつ好きな人いるらしいっすよ"
隣で話していた後輩の凛と恋愛話の流れになってすぐに、近くに来た別の後輩にそんなことを言われた。俺は、頭を殴られたかのような衝撃を受けた。
凛は恥ずかしそうにその後輩に「もう、やめてよ」と言っていたから、俺には知られたくなかったんだろう。だから詳しくは突っ込まなかった。というか聞きたくなかったから、話題を変えてしまった。
もう随分前から好きなくせに、勇気を出して告白しなかった自分が悪い。
でも、俺の中の彼女を好きな気持ちはそう簡単に消せそうにない。
とは言えこれからどうしようかと考えていると、ふとインターフォンが鳴った。
(……え、凛?)
画面には、先程帰っていったはずの凛の姿が映っていた。
「凛?」
「……あ、啓太先輩、すみません。あの、わたし、スマホを置いてきちゃったみたいで……」
言われて、俺はドアを開けて彼女を中に招いた。
「見てないけど、ないの?」
「はい、バッグの中に入ってなくて……でも先輩の家で触ってたから、どこかに落ちてると思うんですけど……」
凛にまた会えて嬉しいのと、まだショックな気持ちが入り混じっていて、俺は複雑な心境だった。
ただ、今は彼女が困っている。辺りを見回して一緒にスマホを探すことにした。
「最後に使ったのいつ?」
「えっと……あ、菜々ちゃんと写真を見せ合ったのは覚えてます。たしかあの時ソファに座ってて……」
肩に掛けていたバッグを下ろした凛は、そう言うと屈んでソファを調べ始めた。
「……………」
スカートが短いことを忘れているのか……下着、というか、パンツが見えていて、俺は思わず手を止めてそれを凝視してしまった。
(……いや、見ちゃダメだろこれ)
ぱっと顔を逸らして違う場所に目を向けたけれど、凛はまだ体を起こそうとはしない。
「ん、ないなぁ……ソファの下かな……」
それどころから、更に体勢を低くして四つん這いになって、お尻を突き出すような状態でソファの下を覗いている。
「ん〜……」
懸命に探している凛に対して、俺は何を思ったのか、彼女の後ろに膝を付いた。
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