ネオンの国へ ( 1 / 10 )
バブルも終わりかけた1988年の ある夏の夜…
渋谷のBunkamuraの近くを歩いていた私は 後ろから声を掛けられた。
「お姉さん、ちょっといい〜?」
軽い口調に軽くイラッとしながらワンレンの髪をかき上げ振り向くと、見るからに派手な(今でいうチャラい)男性が私の顔を覗き込んだ。
「あの…急いでるんですけど」
(はぁ〜…ナンパかよ)
「あ。ナンパじゃないよ」
まるで私の心の声が聞こえたかのように男性は言った。
「…何でしょう」
「お姉さんさ、バイトしない?」
「は?間に合ってます」
その頃 私は専門学校に通いながら 渋谷のディスコ(今でいうクラブね)で働いていた。
歩き出そうとする私の腕を引っ張り男性が言う。
「レストランバーのウエイトレスで時給2000円!!」
「えっ?!」
思わず振り向く私の顔をニヤッとして見るチャラい男性…
「今のバイトは時給いくら?」
「…900円」
それを聞いて男性は更に口角を上げる。
「それは、もったいないなぁ〜!」
「……ちなみにホントにウエイトレスなんですか?ソレ。時給良すぎません?」
「うん。誰でもいいってわけじゃないから。だから声掛けたんだし。何なら今から見に行かない?店、すぐそこだから」
「……」
(怪しい…怪し過ぎる…)
そう思いながらも時給2000円のウエイトレスは かなり魅力的だった。
「…じゃあ、見るだけ」
「よしっ!じゃあ行ってみよー!!」
「…はい」
(軽いな、コイツ…大丈夫か?)
私は 不安を抱えながらも そのチャラ男…もとい、男性に付いて道玄坂を登った。
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