**佳奈@視線**
理緒は疲れてるようで、話も途切れて寝息を立てた。
時計を見ると10時少し過ぎ。
―隣の部屋には……あたしと話をしようと待っている涼がいる。
とうとう…その時が来たんだよね…。
うん…。大丈夫。
何度となく自分にかけてきた言葉。でも、今まで大丈夫なんかじゃなかった。結局は、自分の弱さに負けて、逃げて泣いてるだけだった…。
―――今は。ほんとに大丈夫。
『寝たの?』
ニッコリと笑って涼があたしに手を差し出した。
握れなかった。
怖かった。
今までは。
「すぐに眠っちゃった。」
その手を掴んだあたしは、そのまま引き寄せられて、涼の腿の上にストンと腰を落とした。
久しぶり……この場所。
『久しぶりだな。』
え?
同じこと、考えた?
『佳奈をこうして抱えるの…、しばらくしてなかったな。』
見上げると、そこにいるのは、優しく微笑む涼の顔。
急に胸が高鳴るから顔を彼の胸元に埋めて隠れた。
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