玄関の照明だけがついている。俺の動く音しか聞こえない静かな部屋…。
あ……。
今日も佳奈に連絡するの忘れた……。
佳奈からも連絡はなかったし…呆れられちゃったかな…。
ソーッと寝室のドアを開けると、うつぶせで寝ている佳奈の背中に足を乗せて理緒が真横になっていた。
このまま朝まで放っておいたら、一回転すんじゃねぇの?
そう思ったらおかしくて声が出そうになった。けど、もちろん笑い声なんて出せないわけで、俺は堪えながら理緒の体を正しい位置に戻す。
そして、細い自分の腕を枕代わりにして眠る佳奈の髪を、起こさないよう静かに撫でた。
顔にかかっていた髪の毛が持ち上がり、寝顔があらわになった時―…。
キュッと心臓が縮んだ。
佳奈は、眠っているのに、その頬には涙が道を作っていたから。
俺が遅いから……?
寂しい思いをしてるの……?
理由はなんであれ、佳奈の心が痛みを感じているんだよな?
『連絡できなくて、ごめんな…』
聞いているはずはないけど、言わずにはいられなかった。
頬の涙をソッと拭って髪に唇を当てた。
言えないんだ…
佳奈には言えない。
ごめんな…寂しい思いさせて、ろくに話もしてやれなくて…ごめんな…。
俺は、寝室のドアをまた静かに閉めた。
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