難攻不落の恋人


1: 春はあけぼの(2/8)



春は、あけぼの。


というけれど、あけぼの、つまりは、夜明けなんて爆睡中に決まっている。

わざわざ、夜明けを見る為に早起きするなんてありえない。


けれど今、始発電車で夜明けを見ている。


昨日はいつも行くクラブで、イベント日でもないのについついさっきまで飲んでたから、髪までアルコールと煙草の臭いが染み付いてる。


古い型の私鉄電車はガタガタ揺れて、景色はだんだんと住宅地に変わっていく。


ド田舎から出てきて、早いものでもう2年。一人暮らしにも慣れ、楽しい大学生活も半分過ぎてしまった。

本来なら、そろそろ就職活動を始めなきゃいけないとこだけど、いざとなればフリーターで構わないし、それより、今をどう楽しく過ごすか、のほうが大事。

本当のとこ、今日も部屋に帰ったら、朝寝を決め込みたいところだけれど、そうもいかない。

今日から新学期が始まるし、履修要項やら、専門授業の選択やら、一応でも顔を出さないわけ、と。


人気のない下りの始発電車で見る夜明けは、無慈悲な現実、ってところだ。


-2-
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